『グルグル』の設定する「装置」


スイマセン、なんかもう新生活で全然生活リズムが間に合ってなくて・・・
もう少し頑張ります。

前回挙げた、単行本コミックスの表紙の絵が変わっていっているという話についてです。

作者である衛藤ヒロユキ氏は、この『グルグル』という作品に、10年の歳月を費やしました。連載中に他の漫画を描いたりするなど、ガンガンという月刊誌でしかも隔月連載の回もあったりで、のんびりと続けられてきた作品なのでした。


しかし! それにしても!


あまりにも女の子が可愛くなりすぎてると思いませんか!?

さすがにこれを、「作者は狙って書き分けている」とは言いがたいのですが、
作者がいつの間にか、彼らを「成長」させようという意図を持っていたのは明らかです。
たとえばこんなシーン。


別にセクハラ発言をする気はありませんが、「胸」!!
第二次性徴をしっかりと描くことにより、女の子がひとりの女性になっていく過程を描いていると言えます。
またこれを、主人公である男の子、ニケに言わせていることも重要です。

というのも、この作品の大きなテーマが、「恋の成就」にあてられているからです。
女性となったククリは、男性となったニケに自分の気持ちを表現することでこの物語は収束し、その「人が人を思う(想う)気持ち」により、魔王ギリは倒されます。



しかし、普通のラブコメ漫画と違う点は、ラブシーンをストーリーの中に安易に持ち込まないための「装置」が用意されているということにあります。

それが、旅の導きとして主人公たちを手助けする、精霊ギップルの存在です。

ギップルは、旅先案内人であると同時に、神出鬼没の精霊でもあります。
彼は、漫画の中で「クサい」シーンが現れると突如として登場し、そのシーンを邪魔しようとします。(先の引用の右下のコマの右下に登場しているのがギップル

彼の存在は作品を通して、人間の営みのほとんどが「恋愛」だと言わんばかりの恋愛漫画に対するアンチテーゼとして機能しています。とりあえず恋愛シーンや、格言箴言チックなことを誰かが言った際に、颯爽と現れる彼は、人生を何か単純な一言で片付けてしまおうとする安易な還元主義に対して、警鐘を鳴らしているのです。

話が大きくそれてしまいましたが、つまりこの話は、ニケとククリという少年少女が、冒険を通して「成長」していく過程が描かれた作品とも言えるのです。
もちろん、「成長」を「誰かを好きになる」「誰かと恋愛する」というひとつのファクターでしか捉えられていないという批判もあるでしょうが、そのファクターだけ取り出して考えれば、この作品は10年というスパンをもろともしない成功を収めているわけです。
それをもう少し、具体的に検証してみましょう。